若き日のベルモンドの代表作 「勝手にしやがれ」は12月3日から公開
Text by.Michiko Kuroiwa(ガーデンズシネマ支配人)
「勝手にしやがれ」というタイトル、どこかで聞いたことありませんか。沢田研二さんの歌のタイトルにもありますが、これはフランス映画。戦後フランスで起こった新しい映画の動き、“ヌーヴェル・バーグ”の代表的な作品、とご存知の方は映画通ですね。主人公を演じるのはジャン=ポール・ベルモンド。今回は彼の出世作を紹介します。監督はヌーヴェル・バーグの代名詞、ジャン=リュック・ゴダール。このとき28歳。主人公で自動車泥棒の常習犯ミシェルを演じるベルモンドは26歳。彼が恋するアメリカ人留学生パトリシアを演じるジーン・セバーグは20歳と、若い才能が集まって作られた1960年の作品です。映画は冒頭から主人公ミシェルのアップ。ソフト帽をかぶりくわえタバコ、白いシャツに短めタイのスーツ姿。唇を指でなぞるのがクセの危ない雰囲気だけどどこか憎めない男を、ベルモンドは難なく印象づけています。とっさに殺人を犯すような無軌道な男ですが、どこか人を惹きつける力があります。恋の相手のパトリシアは記者志望の女性ですが、彼の魅力に迷うのも納得できます。
- 「勝手にしやがれ デジタル・リマスター版」 ガーデンズシネマにて12/3〜16公開 監督/ジャン=リュック・ゴダール 原案/フランソワ・トリュフォー 監修/クロード・シャブロル 撮影/ラウル・クタール 出演/ジャン=ポール・ベルモンド、ジーン・セバーグ、ダニエル・ブーランジェ、 ジャン=ピエール・メルヴィル、ジャン=リュック・ゴダール 1960年/フランス/90分 ©StudioCanal
ベッドでの二人のやり取りがまたおしゃれ。ギュッと目を閉じたり、じっと彼を見つめたり、彼の帽子をかぶったりする姿がカッコいい。ここのシーンは要チェックです。
刑事に追い詰められていく彼のラストは何ともクール。あっさりとした終わり方ですが、このベルモンドがなんとも印象的。どんなラストかはぜひ劇場でお確かめください。
憎めない男、ベルモンド。その魅力をこの作品で味わったら、ゴダールとの最後の作品となった「気狂いピエロ」(12/17公開)もぜひ。33歳のベルモンドが演じるのは、またまた逃亡する男です。シリアスなドラマからアクション・コメディーまで幅広く演じてきた彼の作品では「ボルサリーノ」(1970)や「薔薇のスタビスキー」(1974)もおすすめです。特に58歳のときに演じた「ライオンと呼ばれた男」(1988)はベルモンドの人間的魅力がよく出ていると思います。この作品で彼はセザール賞の主演男優賞を受賞。私が配給宣伝を担当させてもらった作品でもあり思い出深いです。現地で取材してもらうのになかなか所在がつかめずやきもきしたのでした。自由に生きているベルモンドらしいのかもしれません。いつまでもチャーミングでありたいものです。
ガーデンズシネマ
鹿児島コミュニティシネマが運営するミニシアター。地域やジャンルにこだわらない良質な作品上映を心がける。劇場窓口では、今年4月に出版された書籍「39席の映画館 いつもみんなで映画をみて」(燦燦社、1188円)が販売されている。これまでの同館の歩みが記されており、なんと500円のクーポン券付き! 映画好きは急いで同館へ!
住所:鹿児島市呉服町6-5マルヤガーデンズ7F
電話:099-222-8746
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