一枚のポストカードが紡ぐストーリー vol.9 

エイミー・ワインハウス 恵美という名の女

Text by.Takashi Okada(Postmark)

僕が恵美(仮称)に再会したのは一昨年の夏の同窓会だった。2次会の会場に行くと、彼女が店の入り口脇で、博多でクラブのママをしているという美人のK子に声を荒げている。「中洲の店がドンダケか知らないけど、アンタがなんでここでも仕切ってんのよ!」。30年ぶりの対面だというのに、やっていることが昔とちっとも変わらない。そんな恵美の姿に僕は思わず吹き出した。彼女は、昔から美人と優等生と金持ちが大嫌いだ。「恵美、たいがいにしろよ」と彼女を引っぱって、盛りあがる同級生たちを横目にカウンターで静かに飲んだ。

僕らは鹿児島のサウスブロンクス(だいぶ盛ってます)と呼ばれるガラの悪い地域で中学時代をともに過ごした。学期が変わるごとに、1人か2人が強制転校でいなくなったり、新たに入ってきたりするというガンタレな中学だった。いざこざやケンカは日常茶飯事だったけど、陰湿なイジメとかなかったし、バカな学校なりの掟(カツアゲは同校内では、いけません的な)が機能していて、それなりに楽しく平和に暮らしていた。思えば無免のバイクの後ろに乗っけてくれたのも恵美だったし、土曜の午後は彼女が煙草や酒をどこからか入手してきた。巻き上げてきた金で、よく回転焼きをおごってくれたりもしたっけ。3年生になってクラスが別れ、僕は塾通いを始め、自然と彼女とツルむこともなくなり卒業してそれっきりだった。

ハイボールを飲みながら、禁煙してずいぶんになる僕は思わず彼女からもらい煙草。アンタこそ変わらないと笑われた。カラオケで騒々しい店内、マイクがこちらに回ってくる。中森明菜の「スローモーション」、彼女の歌声に思わず聞き惚れる。よくよく聞くと恵美も天文館で小さな店のママをやっているという、どおりで歌が上手い。「今度一人で飲みに行くよ」と言うと「アンタが来るような店じゃないよ」と彼女はカッコつけた。

恵美とはそれから会うこともないけど、エイミー・ワインハウスの歌を聴くと、なぜか彼女のことを思い出す。エイミーは、ソウルフルな歌唱とアルコール薬物依存と恋とスキャンダルの中、27歳で夭折したR&Bのアネゴだ。彼女の歌声が、バカで不良で優しかった女友達の存在と重なる。女性のいる店へ飲みに出かけることなんてついぞないけど、彼女の店にはちょっと行ってみたい気もする。もちろん、ソウル・ミュージックなんて流れていないだろうけどね。

 

postmarkPostmark (ポストマーク)

ポストカードの専門店。イベントなどにも出店するが、基本ウェブだけで営業。100%輸入物のポストカード、主にモノクロームの写真作品、ミュージシャンや芸術家、映画俳優、各界の有名人のポートレートや、時代を映し出すスナップ写真、絵画やアート作品などのポストカードを取り扱う。

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