本が俺に教えてくれたこと vol.3
- サッカーデータ革命 〜ロングボールは時代遅れか〜 著:クリス・アンダーセン&デイビッド・サリー 訳:児島修 辰巳出版/1944円
サッカーJ3リーグ・鹿児島ユナイテッドFCでクラブ代表を務める徳重剛さんが紹介してくれたのは、サッカーというスポーツを数字や確率論の視点でひも解いた「サッカーデータ革命」という本。サッカークラブの当事者として、この本をどのように読んだのか。
「サッカーをもっと論理的な角度から見たい、という話をしていたときに、ユナイテッドカフェの田仲さんから教えていただいた本です。読み始めてすぐに『これすごく面白いな』って思いました。例えばサッカーの試合。リーグ戦首位のチームが最下位のチームに勝つ確率は、50%をわずかに超える程度のパーセンテージしかないことであったり、コーナーキックから得点が生まれる確率はわずか2.2%しかないことであったりとか、サッカーが好きな人が読むと、1ページ目から興味深いデータが満載です。
我々から見ると強いチームなんて、まだまだたくさんありますから、それらのチームに勝つ可能性が40数パーセントあるというデータは、本当に勇気づけられます。予算規模が60億円を超える浦和レッズのようなチームにも、勝機があるという話ですから。これで「浦和が絶対勝つ」なんて言われたら、やる気がなくなっちゃうじゃないですか(笑)
今後はますます、データや数値に基づいた試合運びやクラブ運営が広まってくると思います。試合の結果に関しては選手や監督が頑張るわけですし、勝敗を決するのが実力5割、運5割であれば、運をどう引き寄せるかということを突き詰めるしかありません。それではクラブがチームの勝率を上げるために何ができるかといったら、年間予算をどれだけ大きくできるかということと、平均観客数をどれだけ伸ばせるか、ということしかないと思います。もともとこういう考えではおりましたが、この本を読んで、改めてその思いが強くなった感はあります。
じゃあ、どうすれば観客数を伸ばせるか。やっぱり一回来てくれた人に『次も足を運びたい』と思ってもらうことだと思います。今来てくれている人に満足してもらって、そして新しいお客さんを一緒に連れてきてもらう、ということをやらないといけないと思っています。今年は約4300人ですが、これが来年1万人になるかというと、そういうことはありません。2万人という目標があるにしても、1年に1000人ずつ増やすような、着実にファンを増やしていくことを我慢強く継続していかなければならないと思っていますし、逆にそれが一番の近道だと感じています。
「得点した直後は失点しやすい」なんて言われていますが、統計的に見るとそうでもないそうです。まあ試合では基本的に、90分ずっと気をつけていないといけませんから。サポーターの皆さんも、一緒にこの本を読んでもらえば、サッカーというスポーツを新しい視点で楽しんでもらえるかもしれません」。
- 鹿児島ユナイテッドFC クラブ代表 徳重 剛さん(39)
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